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ないものねだり久方ぶりの来客は、夏の夕暮れにやって来た。日も暮れかけ、暑さは幾分和らいではきたが、それでも余韻は残っている。
近くの木で、ひぐらしがカナカナと鳴いた。
相変わらず軽装だな、と直政は思った。徳川四天王の1人とは思えないほどの身軽さだ。
夏の暑さもあるだろうが、忠勝はもともと軽装を好んでいた。それなのに戦で傷を負うことが一度も無く、対して自分は重装備の傷だらけだったので、折に触れて比較されることが多かった。
昔の記憶に、直政は眩しげに目を細めた。
忠勝は直政の前にどかりと腰を下ろした。
「久方ぶりだな」
そうですね。1年ぶり、くらいですか?
「最近、西へ行くより東に行くことの方が多くてな。間が空いた」
別に良いですよ。江戸には家康さまがいらっしゃるんだから、当然です。
「この前江戸へ行った時、康政に会った」
へぇ。
「領国で大人しくしてるが、体の具合が悪いらしい。腸が腐って死ぬ、と大殿にも言ったとか」
家康さまに向かって失礼な。やめて下さい。
「具合を聞いたんだが、今は平気だと言われた。治ったとは、言わなかった」
あの人は嘘はつきませんからね。
「なぁ、直政、お前とあいつは仲良かったよな」
まぁ、最初は目の敵にされてましたけど。
「いつだったか、あいつとお前は一心同体だから、自分が死にかければお前も病気になる、お前が死にかければ自分も病気になる、とか大口叩いてたよな」
あぁ、何か凄いこと言ってましたね。
「例え話だってのはわかってるんだがな。……もう少し、待ってやってくれよ」
別に、俺のせいでは
「もう少し、待ってくれ」
そう呟いた忠勝を、直政は上から見下ろした。
数々の戦場を駆け抜けた屈強な肩が、普段より小さく萎れているように見えた。
「……随分、今日は饒舌ですね」
自分の墓前に佇む忠勝の、言わんとすることは直政にもわかった。
だが、忠勝は思い違いをしている。いつも冷静な忠勝には珍しいことだ。
一々指摘をする義理は無いが、久しぶりにわざわざ訪ねてきたのだから、仕方ない。
どうせ俺の声は聞こえやしないだろうけど、教えてあげますよ、と直政は忠勝の前に降りた。
「康政殿が俺の肩をやけにもったのは、俺1人特別扱いしてるわけじゃありませんよ。
あの人は妙に世話焼きでしたからね、俺が危なっかしくて、人一倍気にかけてくれたみたいです。
それに多分、あの人次男坊でしたから。年の離れた弟みたいで、嬉しかったんでしょう。
皆の前では控えてましたが、2人だけの時なんか、しばしば兄貴面をされて困ったものです」
だから別に、俺は呼んでもいませんし、あの人だって貴方や家康さまを置いていこうとしてるわけじゃないんですよ。
「俺は、お前が羨ましい」
不貞腐れたように忠勝が言った。そんな様を見たのは、今までで初めてで、少し愉快な気持ちになった。
こちらの声は届かないのだから仕方ない。その辺りは、自分より康政の口から聞いてもらわなくれはいけないな、と思った。
直政は立ち上がり、東の空を見あげた。遥かな江戸に思いを馳せる。
ふいに本音がポロリと漏れた。
「俺だって、貴方が羨ましいですよ」
これではまるで、ないものねだり。
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康政の、俺と直政は一心同体!ネタです。
うちの徳川は、家康←直政←康政←忠勝 かもしれないと思った。
人物相関を見てたら、直政と康政が仲良しで(というか康政が一方的に気にかけている)康政と忠勝も同い年で仲良しなのに、直政と忠勝は特に仲良しではないっていう日和ぽさに何かニヤっとした(笑)
むしろ忠勝の方が直政のことをライバル視してる?ともあって、ちょっと意外。
私のイメージだと逆なんですが(お前のイメージなど知ったことか)
武勇だと直政→忠勝な気がします。家康様第一主義者的に。
康政は、同じクラスの友達がいない転校生に率先して話しかけるタイプだと思うので、そんな感じで直政をかまっていると良いな!プラス年上風も吹かしたいので、ついつい表現が過激になればいい。
位置としては直政も忠勝も同じくらいの友達なんだけども。
でも、忠勝としてはそのへん内心おもしろくないと良いです。忠勝は大人なので、態度に出したりはしませんが……
そして直政は家康さまマンセーだからそのへんの葛藤はどうでもいい(笑)
全体的に一通な感じになったけど、でも徳川は上手く距離がとれていたり、素直だったりで案外うまくいっています。
豊臣は近すぎる分意地っぱりだから、切実なのに上手くいかないイメージです。あぁ…
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