<幕末>
斉藤さんの思い出。うっすら歳受け前提です。
『むかしむかし。
壬生狼と呼ばれる男たちがいたんだって。
聞いたことあるって?へぇ、珍しいな。
歴史の一時だけに浮かんで消えた、木の葉みたいな連中だっておとっさんは言ってたのに。
それなら、なんで「みぶろ」なんて呼ばれていたのか知っているかい?
壬生、というのはそういう場所にいたから。
狼というのは、そいつらが乱暴だったから。
まるで狼のようだと恐れられていたんだってさ。
実際に、彼らはたくさんの人を殺した。
人殺しだ。じょーいは、って言って、今のこの国をつくった偉い人達の仲間をたくさん殺したんだ。
それだけじゃなくて、自分たちの仲間まで殺した。
それはまるで、血に餓えた狼が共食いをしているかのようで、だから奴らは壬生狼と呼ばれたのさ。』
「そう言って、その子は笑ったんだ。」
縁側に、老人と並んで腰を降ろした少年が、赤く腫れぼったい目をして言う。
「でもじいちゃんの話に出てくる人たちは、悪者なんかじゃないでしょう。
俺なんだか胸の、ここんところがもやもやしてきちゃって。
だから嘘吐き!って言ってしまったんだ。
そしたらその、喧嘩になっちゃって。
ねぇじいちゃん、俺は悪い事をしたの?」
べそべそと泣きながら、それでも納得せずに膨れている孫の頭を、老人は優しく撫でた。
「お前は悪くないよ。
ただ、その子が、この爺のように本当の彼らを知っているわけじゃなかったんだ。
でもその子も、嘘を言ったわけじゃない。
それが本当だと、おとっさんから教わったんだからね。」
「それじゃ、どうすればよかったの?」
困った顔で自分を見上げる孫に、老人は―、藤田五郎は、にこりと笑った。
「そうしたら、嘘吐きと言わないで、お前の知っている本当の事をおしえてやればいいのさ。
その子はびっくりして、もしかしたら信じないかもしれないが、それが本当のことなんだ。自信をもって聞かせてやれ」
パッと、少年の顔が輝く。
「うん、わかった!ありがとうじいちゃん!!」
そう笑うと、パタパタと足音をたてて五郎の部屋から駆け出していく。
その後姿を見送った五郎は、「壬生狼か…」と呟いた。
彼らが壬生狼と呼ばれていた頃、自分もその場にいた。
今よりずっと若く、名前も今と違っていた。
「斎藤一」
そう、あの頃はそう呼ばれていた。
老人はゆっくりを瞼を閉じる。
「むかしむかし、か…」
久方ぶりに、あの頃に思いを馳せる。
あれから時は流れ、年号は江戸ではなく明治になり、今は大正になった。
それでも自分が京で暮らした日々は紛れもない真実で。
決して御伽噺でもなんでもないのだ。
「結局狼は狼のままだったのか?」
一人呟いた疑問には、誰からの答えもない。
「いいや、違うな…」
夕焼けが真っ赤に染めた部屋で、ゆっくりを瞳を開ける。
「あいつらは血も涙もない狼なんかじゃなかった。
未来は見えなかったが、みんな必死に生きていた。
楽しい事があれば大声で笑った。
友が死ねば涙も流した。
つらい状況には心を痛めた。なにより…」
ある人のことを想う。
僅か数年にすぎないが、鮮やかに自分を惹きつけた人。
その記憶はまるで火傷のように、今も色あせずに胸を焦がす。
抱きしめたあの人は、あんなにも暖かだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
斎歳前提だと、生き残る斎藤さんも良いよね!(はいはい)
斉藤さんの思い出。うっすら歳受け前提です。
『むかしむかし。
壬生狼と呼ばれる男たちがいたんだって。
聞いたことあるって?へぇ、珍しいな。
歴史の一時だけに浮かんで消えた、木の葉みたいな連中だっておとっさんは言ってたのに。
それなら、なんで「みぶろ」なんて呼ばれていたのか知っているかい?
壬生、というのはそういう場所にいたから。
狼というのは、そいつらが乱暴だったから。
まるで狼のようだと恐れられていたんだってさ。
実際に、彼らはたくさんの人を殺した。
人殺しだ。じょーいは、って言って、今のこの国をつくった偉い人達の仲間をたくさん殺したんだ。
それだけじゃなくて、自分たちの仲間まで殺した。
それはまるで、血に餓えた狼が共食いをしているかのようで、だから奴らは壬生狼と呼ばれたのさ。』
「そう言って、その子は笑ったんだ。」
縁側に、老人と並んで腰を降ろした少年が、赤く腫れぼったい目をして言う。
「でもじいちゃんの話に出てくる人たちは、悪者なんかじゃないでしょう。
俺なんだか胸の、ここんところがもやもやしてきちゃって。
だから嘘吐き!って言ってしまったんだ。
そしたらその、喧嘩になっちゃって。
ねぇじいちゃん、俺は悪い事をしたの?」
べそべそと泣きながら、それでも納得せずに膨れている孫の頭を、老人は優しく撫でた。
「お前は悪くないよ。
ただ、その子が、この爺のように本当の彼らを知っているわけじゃなかったんだ。
でもその子も、嘘を言ったわけじゃない。
それが本当だと、おとっさんから教わったんだからね。」
「それじゃ、どうすればよかったの?」
困った顔で自分を見上げる孫に、老人は―、藤田五郎は、にこりと笑った。
「そうしたら、嘘吐きと言わないで、お前の知っている本当の事をおしえてやればいいのさ。
その子はびっくりして、もしかしたら信じないかもしれないが、それが本当のことなんだ。自信をもって聞かせてやれ」
パッと、少年の顔が輝く。
「うん、わかった!ありがとうじいちゃん!!」
そう笑うと、パタパタと足音をたてて五郎の部屋から駆け出していく。
その後姿を見送った五郎は、「壬生狼か…」と呟いた。
彼らが壬生狼と呼ばれていた頃、自分もその場にいた。
今よりずっと若く、名前も今と違っていた。
「斎藤一」
そう、あの頃はそう呼ばれていた。
老人はゆっくりを瞼を閉じる。
「むかしむかし、か…」
久方ぶりに、あの頃に思いを馳せる。
あれから時は流れ、年号は江戸ではなく明治になり、今は大正になった。
それでも自分が京で暮らした日々は紛れもない真実で。
決して御伽噺でもなんでもないのだ。
「結局狼は狼のままだったのか?」
一人呟いた疑問には、誰からの答えもない。
「いいや、違うな…」
夕焼けが真っ赤に染めた部屋で、ゆっくりを瞳を開ける。
「あいつらは血も涙もない狼なんかじゃなかった。
未来は見えなかったが、みんな必死に生きていた。
楽しい事があれば大声で笑った。
友が死ねば涙も流した。
つらい状況には心を痛めた。なにより…」
ある人のことを想う。
僅か数年にすぎないが、鮮やかに自分を惹きつけた人。
その記憶はまるで火傷のように、今も色あせずに胸を焦がす。
抱きしめたあの人は、あんなにも暖かだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
斎歳前提だと、生き残る斎藤さんも良いよね!(はいはい)

